初めて生で落語を聴く(立川志の輔独演会@水戸芸術館)

生で聴く落語ってやっぱいいもんだなぁ。

…というわけで、6月7日に開催された立川志の輔独演会@水戸芸術館に行ってきた。

落語を生で聴くのは、これが初めて。たまたま芸術館のサイトを眺めていた時に志の輔さんの独演会の情報が目に入って、発売開始日を即カレンダーにメモ。発売日当日は嫁さんと二人で、ひたすら電話・電話・電話…15分ほどかけ直しまくってようやく繋がったところで「一番後ろの席になりますがよろしいでしょうか?」と言われたものの、迷わず「はい!」と返事。志の輔さんの落語チケットはまぁなかなか取れない、という話をちょいちょい見かけていたので、無事に取れてよかった。

ところで、今回の会場は芸術館のコンサートホールATMである。コンサートホールATMは基本的にはクラシック音楽専門ホールで、それこそ、この2週間くらい前にはここで小澤征爾さんがタクトを振るっていたりする*1わけで、そんな場所で聴く落語というのもなかなか珍しい気がする。予約受付開始日早々にチケット完売になっただけあって、開演時間が近づくにつれて、会場はほぼ満席になった。年齢層的には、自分の親くらいの世代の人たちが割と多かっただろうか。自分たちのような、30代そこそこの客は比較的稀である。

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↑開演前の会場の様子。自分が座っていた斜め位置からだと、舞台はこんな感じに見える

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↑ちなみに、この日の演目はこちら(終演後の出口に貼ってあったもの)。

前座は6番弟子、志の太郎さんの「金明竹」。加賀屋佐吉のところから来た男が話す口上のくだりでひとしきり盛り上がる。

続いて志の輔さん登場。マクラでは、その昔志の輔さんがIBS(茨城放送)でラジオのレギュラーを持っていた頃、上野から水戸は特急で1時間半くらいかかってたのに、いつの間にやら車両はキレイになって1時間くらいで着くようになって随分近くなりましたねぇ…なんて話からリニアモーターカーの話に行き、いつの間にかスッと「みどりの窓口」へ。みどりの窓口の係員のもとにやって来る、一癖も二癖もあるお客さんとのやりとり。思い通りの時間の切符が取れず文句たらたらの客、続々と条件を追加していった結果日本を半周するようなきっぷになり、買うのかと思ったら結局買わない客、そこの券売機の中にある切符を全部出せ!と怒る客…最後の飲み屋でのどんでん返しも含めてひたすら笑った。

中入り後、志の輔さんの「帯久」。温厚な性格の和泉屋与兵衛と陰気な性格の帯屋久七という、二人の呉服屋にまつわる物語。和泉屋が帯屋に貸した100両を巡って返した・返さないで揉め事になり、後半には名奉行大岡越前の大岡裁きも登場する、いわゆる「勧善懲悪」もの。1時間あまりの長編だったが、途中途中で小気味良く志の輔さんの解説が挟まるので、時が経つのを忘れてすっかり物語の中に入り込み、聞き入っていた。

ホントにあっという間の2時間半、プロの落語家さんの話芸はさすがに素晴らしいなぁと思う独演会だった。まさに伝統芸能。一人でいくつもの人格を演じ分けて、時には身振り手振り、扇子のような小道具を使いながら、聴いている人たちの頭のなかに物語を作り上げていき、笑いも取るというのが実に面白い。いいもの見せていただいてありがとうございました。渋谷PARCOで毎年やっている志の輔さんの一ヶ月公演の独演会も、一度聴きに行きたいなぁ(チケット入手は相当至難らしいけど…)。


  1. ちなみに小澤さんは、水戸芸術館専属のオーケストラである水戸室内管弦楽団の指揮者の一人でもあり、さらに2013年からは水戸芸術館の館長でもある []