大井町にある、知る人ぞ知る万年筆屋さん「フルハルター」で、ペリカンのスーベレーン M400を購入した。店主自ら、使い手の書き方に沿ってペン先を調整した上で商品を販売してくれるというお店。「使い手の書き方に沿ってペン先を調整した上で」というところがミソで、それが故に通信販売は一切行っていない。なぜなら、その人のペンの使い方・字の書き方は実際に書いている様子を見てみないと分からないから。
よく他のブログ等で「狭いお店」ということを目にしてはいたが、行ってみるとたしかに広くはない。接客スペースはおそらく畳1畳と少しくらいの広さで、そこに机と椅子が設えてあり、試し書き用の紙が置いてあって、店主の森山さんと対面して座ることになる。他のお客さんがいたら相席っぽい感じになるようなので、気まずいな…と自分は思ってしまったりするんだけど、たまたま自分が伺ったときは注文の際も受け取りの際も他のお客さんはいなかった。
ちなみに私はM400 or M600 or M800で迷いつつお店に伺い、森山さんに「モデルはお決まりですか？」と訊かれたので、3つのうちどれにするか迷っている旨を伝えた。そこでM400のMと、M800のBBをそれぞれ試し書きさせてもらうことになった。M600は実物はあるが、インクは入っていない。私が試し書きするのを見ながら、森山さんはこんなことを仰っていた。
「試し書きして頂く際に、まずM400はこういうサイズだ、ということを確かめてください。そして、私の調整だとこういう書き味になりますから、それがご自分に合うかどうかを確かめてください。誰にでも合う、というものではないし、ウチの調整が合わないという人も、もちろんいらっしゃいますので。M600はインクが入っていませんので、持ったときのサイズを見てください。M800は、他の2つと比べると大きさ・重さともに結構違いますから、そこが合うかどうかを確かめてみてください。それと、BBという太さはこういう太さ・書き味だ、ということを確かめてください」
最終的には自分の中でM400とM600の2択になったが、お話ししつつ色々と考えた結果、M400にすることにした。試し書きしている時、森山さんはこちらが書いている様子を特にじっくりとは見ずに、じっと対面に座っている。しかし、最後購入する段になって白い紙に「ではこちらに住所とお名前、電話番号を書いてください」と言われ書くのだが、この時には非常にじっくりと書き方を見ている。そして、何かの数値を手元のメモに書いている。これが、おそらくペン先調整のためのメモなのだろう。
事前に仕入れていた情報では、注文から納品まで1ヶ月くらい、あるいはもっと…という話を目にしていたのだが、実際には「早ければ明日、遅くとも1週間以内にはご用意できますよ」とのこと。実際、注文した次の日の朝には森山さんからお電話があって「いつでも取りに来て頂いて結構ですよ」ということだったので、早速お電話があったその日にお店に伺い、受け取りを済ませてきた。
以下は、森山さんと色々とお話しした際のメモ。
- M400とM600で迷うんだったら、M400をお勧めする。理由は、以下のとおり：
- まず、単純に値段が安いこと（M400とM600では8千円くらいは違う）
- M400とM600は大きさと太さが若干異なるくらいで、基本的な構造に大きく変わりはない。「M400ではなくM600のこの大きさ・太さが自分にはジャストフィットだ」という方も、そう多くはないがいらっしゃるので、そういう方はM600を選べばよい。あくまでも高いから良い、というものではないので、どちらかで迷うのであればM400にしたらどうですか、とお伝えすることにしている
- いずれのモデルでも、長く使っているうちに手が馴染んでくる。M400を使っていればM400に、M600を使っていればM600にフィットしてくるから、2つのモデルで迷うのであればM400にするのが良いのでは、と思っている
- （ペリカンの万年筆に）入れるインクについては「必ずペリカンのインクを使用するようにしてください」と言っている*1。ペリカンでも、エーデルシュタインインクではなくて、いわゆる4001シリーズのオーソドックスなインクを使用して欲しいとのこと。とはいえ、どのインクを入れるかということについて、最終的には買っていただいたお客さんに決める権利があるのはもちろんなんだけど、とも。
手元にペリカンのロイヤルブルーのインクがあったので、家に帰ってから実際に書いてみると、実にサラサラというかヌルヌルというか。特に力を入れずともインクが出てくるってこういうことなんだなぁ…というのを実感した次第。「まずは、馴染むまで3ヶ月くらいは使ってみてください」とのことだったので、これからガシガシ使って自分のものにしていこうかなぁ、と。
- この件については、実際に起きたトラブルの事例含め森山さんのブログにもう少し詳しい話が載っていた [↩]