スルッとKANSAI 3Dayチケットを使いまくる旅 その1

8月最終週にちょっと遅めの夏休みを取って、スルッとKANSAI 3Dayチケットを使って関西方面を旅行してきた。その旅行記というか備忘録というか、まとめ。

その前に…そもそも「スルッとKANSAI 3Dayチケット」って何だ?

大雑把に言ってしまえば「関西の私鉄・バスが3日間乗り放題になるチケット」。ただ、関西圏で売っているチケットとそれ以外の地域で売っているチケットには若干レギュレーションが異なる部分があり、ちょっと分かりにくいので以下にまとめてみた。

共通のレギュレーション
  • 利用可能エリア:こちらを参照。近鉄・南海の有料特急券が必要な列車は、特急券のみ別途購入すれば乗車可能
  • 約350施設で特典サービス:拝観料や入場料金が少し割引になる施設がある。対象施設はこちらを参照(PDF)
関西圏で発売されているもの
  • 公式HP:3dayチケット(関西限定版)|チケット&グッズ|スルッとKANSAI
  • 春版・夏版・秋版の3シーズン制。主に行楽シーズンが対象期間となっており、それ以外の時期で使用できない期間がある。年末年始は使用期間対象外になっている
  • 発売されているのは3Dayチケットのみ。ただし使用期間内であれば任意の3日間使用可能(連続でなくてもよい)
  • 販売価格:大人5,200円、子供2,600円(いずれも税込、2015年8月時点の価格)
  • 発売箇所:スルッとKANSAI加盟各社局の主要駅(詳しくは上記のHPを参照)
それ以外の地域で発売されているもの
  • 公式HP:2day・3dayチケット|チケット&グッズ|スルッとKANSAI
  • 春夏版・秋冬版の2シーズン制。関西圏版と異なり、使用できない期間はない。年末年始も使用可能
  • 2Dayチケットと3Dayチケットがあり、いずれも連続2日間ないし連続3日間有効
  • 販売価格(いずれも税込、2015年8月時点の価格)
    • 2Dayチケット:大人4,000円、子供2,000円
    • 3Dayチケット:大人5,200円、子供2,600円
  • 発売箇所:事前にクーポンを購入し現地でチケットと引き換える方法と、直接チケットを購入する方法がある。近隣に直接チケットを購入できる場所がある場合は、その方が現地でチケットを引き換える手間が減る分、ラクになる*1
    • クーポンを購入し現地でチケットと引き換える場合:近畿2府4県(大阪・京都・兵庫・奈良・和歌山・滋賀)および三重県下を除く、各旅行会社の主要支店・主要営業所・主要旅行センター・コンビニエンスストアマルチ端末でクーポンを購入、引き換え場所(関西の主要駅等)でチケットと引き換え
    • 直接チケットを購入する場合:都内のブックファーストのいくつかの店舗や羽田空港など(詳しくは上記の公式HPを参照)で取り扱いがあるので、そこで直接チケットを購入する

というわけで、1日目出発

東京→新大阪

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東京 7:33 → 新大阪 10:26 ひかり503号
iPhoneユーザなものでモバイルSuicaと縁がなく、エクスプレス予約のためにわざわざクレジットカードを作るのも面倒だ…と思ってたんだけど、最近ようやく白ロムAndroidケータイにモバイルSuicaを導入してエクスプレス特約もつけてみた、という極めて個人的な事情があるものだから、せっかくだから使わないとね、ということで「IC早得」。とはいえ東京6時台の「のぞみ」に乗るのもそれはそれで大変だ…ということで「ひかり」。ひかりとはいえN700系なので電源はあるし、新大阪到着もそんなに遅くならなそうだしまぁいいか、ということで。

ちなみに、去年の夏は紀伊半島をぐるっと廻る旅をしたんだけど、どうやら去年も全く同じ時間のひかりに乗ったらしい。なんとなくそうかな…と思ってはいたけど、後で写真を見返してちょっとビックリした。家をちょっと早目の時間に出て新幹線に乗り、さらにどこかへ行こう、ということになるとちょうどいい時間の列車みたい。新大阪到着も10時半くらいだし。

新大阪→難波→極楽橋→高野山

新大阪からは御堂筋線で難波へ。難波駅の南海改札構内に、大阪近辺ではおなじみの551蓬莱があることを事前に調べていたので、ちょっと早いお昼ごはんに豚まんを購入し、特急こうやの到着を待つ。

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難波 11:12 → 極楽橋 12:40 南海高野線 特急こうや7号
極楽橋 12:44 → 高野山 12:49 南海鋼索線

しばらくして、9面8線のホームの一角に特急こうやが入線。現在、高野山開創1200年記念として、特別仕様のこうやが走っている。今回乗ったのは「赤こうや」で、その他に「黒こうや」「紫こうや」の計3編成がある。

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厳密には「こうや」で高野山駅まで行くことはできない(特急の終点、極楽橋駅でケーブルカーに乗り換えることになる)のだが、行き先表示のメインはあくまでも「高野山」。

半月前くらいにネット予約したんだけど、その時点で運転席と逆側の最前列(座席番号3番・4番)は埋まってた。橋本以南のグネグネっぷりを最前列で見てみたかったけど、まぁ窓際ならどこでもいいか、と中程の座席を予約。極楽橋からのケーブルカーへの乗り継ぎを考えると、先頭車両のドア近くが良いのだろうけど。

それにしても、高野線は実に起伏に富んでいる。河内長野あたりまでは平地をグングン飛ばしていくのだが、そこから先は徐々に山間の風景になってくる。林間田園都市あたりは山を切り開いて作ったニュータウンの趣だし、橋本から先は50パーミルの急勾配やら半径100m以下のグネグネ急カーブやらが続き、すっかり登山鉄道。それゆえ、橋本以南に入線できる車輌は限定されていて*2、特急と一部の急行列車以外は運転系統が橋本で分断されている。

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そんな急峻な山をグイグイ登って着いた駅が、極楽橋。南海高野線と南海鋼索線の乗り換えのための駅、と言っても過言ではない。駅の周りにはお店らしきものは見当たらないし、駅前はただの細い山道。ケーブルカーに乗り換える人は改札を出ずに、正面突き当たりを右に歩くとケーブルカー乗り場がある。ケーブルカーで高低差328mを5分ほどで登り、高野山駅に到着した。

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高野山駅前は南海りんかんバスのターミナルになっていて、奥の院や大門方面に行くバスが出ている。夏休み中の日曜日だからか、時刻表にない臨時便も随時出ていた。

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バスに乗って駅を出るとすぐに正面に現れるのが、この看板。高野山駅から、奥の院などがあるメインストリートへの道は2本あるんだけど、そのうち近道になっているルートは南海りんかんバスの専用道路になっていて、一般車両と歩行者は通ることができない。なので、高野山駅に降り立った人はほぼ必然的にバスに乗ることになる。高野山駅から10分ほどバスに揺られて、メインストリートに到着した。

荷物を置き、高野山内をブラブラ歩く

高野山は、弘法大師空海が開創した密教・真言宗の道場、修行の地。2015年で、開創からちょうど1200年。4月~5月にかけては開創1200年記念でさまざまなイベントが催された。また、2004年には「紀伊山地の霊場と参詣道」として、ユネスコの世界文化遺産に登録されている。土地としての高野山一帯は山に囲まれた盆地になっていて、道は結構平坦なところが多い。

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こちらが、今回お世話になった宿坊、大圓院。最近は宿坊もネットで予約できるところがいくつかあるようで、ここのお寺もそうだった*3。チェックイン前に荷物だけ置かせてもらおう、と思って寄ったところ「もうチェックインして頂いても大丈夫ですよ」ということだったので、チェックインを済ませて部屋に通してもらった。

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今回泊まったお部屋。中はもう布団が敷いてあった。広さは10畳ほどあり、1人で泊まるには十分に広い。クーラーはないが、テレビと扇風機は備え付けてある。山の上ということもあって適度に涼しいので、網戸にして扇風機つけてれば十分な感じだった。ただし、お風呂とトイレは共同だった。もしかしたらトイレ付きのお部屋もあるのかもしれないけど。

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荷物を置いて身軽になったところで、付近を散策しに出かけることにした。まずは弘法大師の御廟がある、奥の院へと向かった。参道の入口である一の橋から約2キロほど、奥の院までの参道が続いている。参道の両側には、樹齢数百年は下らないであろう杉の大木がズラッと並び、20万基ともいわれる戦国武将の墓や慰霊碑の類が建っている。まぁ懐が深いというかなんというか、企業のコマーシャルじみた慰霊碑もたくさんあったりして、ちょっと面白い。道は多少のアップダウンはあるものの、比較的なだらかで山登りというよりはウォーキングっぽい感じ。大木が茂っていて直射日光があまり射さないので、比較的涼しい。そうそう、虫除けスプレーは事前にどこかで買って持ってたほうがいいかも。蚊とかが結構多かった気がする。虫を殺生するわけではないし、いいでしょう…。

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しばらく歩いて、御廟橋が見えてきた。一の橋からここまで、のんびり歩いて1時間かからない程度。この橋の奥にある建物が燈籠堂で、弘法大師御廟は燈籠堂の裏手にある。弘法大師御廟を参拝したあと経路に従って進むと、燈籠堂の地下に入ることができるので、入ってみるとよいと思う。結構暗い部屋の中に数多の燈籠がズラリと並ぶ姿は、なんというか不思議な感じがする。弘法大師の三鈷と数珠(を象ったもの)にも触れることができる。ちなみに御廟橋から先は脱帽・撮影・飲食禁止なので、御廟と燈籠堂の写真はない*4

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奥の院からの帰り道。一の橋からではなく、車やバスで近くまで行く人は、こっちの道を通ることになる。さっきの参道とは打って変わって空が開けていて、企業の慰霊碑的なモノが多い。

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奥の院からの帰りがけに、苅萱堂に立ち寄った。ここは、刈萱道心と石童丸のちょっと哀しいお話が、ケヤキの一枚板の彫刻で、まるで絵本のようにズラッと並んでいる。ストーリーがどこかにまとまっていないかな…と思って探してみたら、高野山霊宝館のサイトにかつて載っていたようだ。下はWebArchiveのリンク。

そんな感じで16時過ぎくらいに宿に戻って、晩ご飯までちょっと昼寝。

精進料理をいただく

17時半から晩ご飯だったんだけど、うっかり昼寝しすぎて内線で起こされた。いそいそと大広間へ向かったら、すでにご飯が用意されていた。

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精進料理なので、メニューには肉も魚もない。ないんだけど、おかずの品数が多いのと白飯がおひつでドーンとやってくるので、それを食べてると結構お腹いっぱいになる。胡麻豆腐がモッチモチで大変おいしいし、味噌仕立ての鍋もおいしかった。事前にどっかのサイトのレビューで見たとおり、天ぷらは冷めてたけど。そういえば、高野山の宿坊のレビューではここに限らず「天ぷらが冷めてた」という感想をよく目にするなぁ…。ちなみに、手前にあるビール風の飲み物は般若湯です。

胡麻豆腐をどこかで買って、持って帰りたいなぁと思ったけど、生の胡麻豆腐はあまり日持ちしなそうなので今回は諦めた。この先の行程がまだ長いので…。

「般若湯」って何?

仏教の「五戒」の中には「不飲酒戒」という項目がある。ただこれは、酒を飲むこと自体を戒めたというよりも、酒を飲むことによって他の4つの戒め(不殺生戒・不偸盗戒・不邪淫戒・不妄語戒)を犯しやすくなるから、という理由によるものらしい。

そしてあるとき「ということは、酒を飲んでも他の4つの戒めを犯さなければ良いのでは…?」という人が現れ、「これは酒ではなく、智慧を授かる飲み物だ…!」ということになり…。「般若」はサンスクリット語で「智慧」のことなので、いつしかお酒のことを「般若湯」と呼ぶようになったんだそうな。

…ということで、「般若湯」は「お酒」のことを表す、仏教界のスラング。こんな風に、般若湯を取り扱っているお店もある。

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ご飯を食べ終わって部屋に戻りテレビをつけたら、ちょうど世界陸上をやっててすっかり見入ってしまったんだけど、翌日の朝が早いので早々に就寝。寺の夜は早く、朝も早い。


  1. 今回は銀座のブックファーストで事前に購入して行った []
  2. いわゆる「ズームカー」と呼ばれる車輌 []
  3. 公式HPはネット予約受け付けてないみたいけど、楽天トラベルとかで予約が可能 []
  4. ていうか、撮影禁止区域内でセルカ棒使って写真撮りまくってる人いたけど… []